アクチュアリー2次試験は合格率が10%台で比較的安定しています。
その勉強法についてはブログ等でもあまり情報がありません。
正会員に聞くシリーズの試験合格体験記、最後の締めくくりは生保コースの2次試験対策についてお聞きしました。
第Ⅰ部対策 ここで合否が決まる(たぶん)
100点満点の配点のうち、知識問題にあたる第Ⅰ部は50点です。半分ですね。
足切りは60%と試験要綱にありますので50*60%=30点です。
※ここは毎年同じとは限らないのでご注意※
第Ⅱ部の所見問題で点数を稼ぐのは厳しいことを後述しますが、ここでは頑張って40-50点を稼ぎたいところです。
究極的には「満点」を目指して欲しいです。
問1:穴埋め・知識問題(30点)
穴埋め問題は確実にとりたいところ。
自分は日本語の暗記が本当に苦手でして、この手の問題で落とすことが非常に多く、結果的に合格できないことが多かったです。
なお、穴埋めについては「正確に」書くことをお勧めします。
特に実務でなれている方は「意味で覚える」ことが多いと思いますが、これで1点損するのはもったいないですよね。
自分は過去問を徹底的に調べ、穴埋めとして出題された箇所、箇条書きで列挙する問題の箇所などは、全てテキストに書き込みました。
おかげで、テキストは書き込みだらけです。
そうすると、「この問題は数年おきに出ているな」といった傾向もつかめます。
https://nishii-showten.com/business/2018-actuary-exam-paper/
問2:記述式の知識問題(20点)
暗記!
が答えですが、記憶のフックをいかにたくさん作るかによって、個人差がかなり生まれると思います。
早期に合格した人は、勉強量が確かに多いのですが、
2通りいました。
自分は「書いて覚える派」でしたが、あまりに勉強量が膨大なので、「読んで覚える派」に転向しました。
そして気付いたことは、「いまいち解答を書けない」という残酷な事実でした。
繰り返し読んでいくと、確かに記憶には残りますし、テキストの文字やページが頭の中で画像として再生できるくらいには繰り返しました。
それでも、答案を書こうと思って書き出してみると、なかなかかけないのです。
ですので自分は折衷案として、
という対応をしました。
あとは追加として、「声に出す」ということもやってみました。
仕事帰り、駅から自宅へ徒歩で帰る10数分、
といったこともやって、とにかく頭のなかに定着させて、解答として書けるまで練習しました。
2次試験に良く出る「枠」
対策:自分で問題を作ってみる
穴埋め問題と記述問題は同時に対策することが考えられます。
例を見てみましょう。
H29(2017)年度
生保1 問題1(1)[5点、穴埋め5箇所]
保険会社向けの総合的な監督指針における団体保険又は団体契約の保険商品審査上の留意点について、次のA~Eに適切な語句を記入しなさい。
[問題文省略]
この穴埋め問題を、こう変えてみたらいかがでしょうか??
保険会社向けの総合的な監督指針における団体保険又は団体契約の保険商品審査上の留意点について、簡潔に説明しなさい。
穴埋めでなく、解答用紙にイチから全部書いてね、という問2タイプの問題です。配点は10点として、重要なキーワード(当然5つは既に答えがある)をあてに行くことになり、記憶の定着にもよいと思います。
また、穴埋め問題より、全体を覚えるほうが記憶の定着はよいようです。
コレを過去問全部で繰り返すと、
などがだんだんわかってくると思います。
これに気付くのに3年ほどかかりました、、、
なので、こういったゴリゴリの法令研究はそこまで効果はなく、趣味の範囲かなと、、、
2次試験にたまに出る「収益検証」
第Ⅱ部対策 点数稼ぎは厳しい(たぶん)
所見問題にあたる第Ⅱ部は50点です。半分を論文に費やすわけなので、かなりの負担があります。
また、足切りは40%なので20点です。
第Ⅰ部で40点以上確保できていれば、第Ⅱ部で足切りされなければ合格です。
是非お勧めしたいのはこの足切りをかいくぐって合格に達するスタイルで、とにかく第Ⅱ部の採点は辛いことで知られています。
それではこの所見問題をどのように攻略していくかを見てみましょう。
所見とはいえ知識問題の集合体
実例を眺めながら、問題の構造を整理してみます。
H29(2017)年度
生保1 問題3(1)[30点、解答用紙4枚以内]
生命保険会社の付加保険料設定について、次の①~③の各問に答えなさい。
①国内における付加保険料に対する現在の監督体制について、簡潔に説明しなさい。(4点)
②付加保険料の設定に際して留意すべき点を4つ挙げ、それぞれ簡潔に説明しなさい。(6点)
③所見問題(略、20点)
上記の①②は完璧な「知識問題」ですよね。
ここで落としてよいのは、「1点」くらいだと思います。
③の所見問題で5-10点ほど積み上げられたら御の字で、配点30点のうち15点行ければ十分といえます。
「足切り20点」を意識すると、確実に稼げる「知識問題」はかなり重要と言えます。
知識問題で落としたら即「足切り」の可能性があります。
所見問題の攻略・いかに書くか
所見部分についてはかなり個人的見解が入りますので、あくまで参考程度に読んでいただけると助かります。
H29(2017)年度 生保1の模範解答の最後に以下のような留意点が公表されています;
問題文の質問にまっすぐ答える。
出題者としては合格に足る能力を有するかを測るために、問いたいポイントがあって各問を作成している。
特に論述が中心となる問題3においては、
などの指示がある場合は、適切な論理を展開する力があるかを見極める視点を出題者側で“指定”しており、それに沿って採点基準も設けている。
この点に留意して改めて実例を見てみましょう:
H29(2017)年度
生保1 問題3(2)[20点、解答用紙3枚以内]
貴社では、国内での長引く低金利環境を背景に、国内金利と比べて相対的に高いことが期待できる海外金利を活用した外貨建ての一時払終身保険(※)を開発することとなった。
当商品を開発するにあたり、商品設計、 基礎率設定 および
当商品の導入に伴うリスクと そのリスク管理手法に関して、 当商品の収益性の観点からアクチュアリーとして留意すべき点を説明し、所見を述べなさい。
なお、解答にあたっては、下記の<前提>を踏まえることとし、
為替水準の変動による契約者行動についても触れること。 また、円建ての一時払終身保険と共通する事項も含めて述べること。 <前提>
販売チャネルとして、金融機関代理店専用であること。 他社商品との競合上、高い利回りや工夫した商品設計など商品魅力が求められていること。 資産運用は、原則として、保険契約と同一通貨で行うこと。
問題文に沿って整理する
本問では、問題3(1)と異なり、「知識問題」にあたる①②に相当する設問がありません。
さてどうすれば半分くらいの加点を得られるでしょうか??
商品設計について4つ、前提が3つ、「触れること」「述べること」という指定が2つ。
ですので、少なくともこの9点について記載(理解)していることを示すような答案つくりを心がける必要があるということです。
おそらく、この9点のうち一つでも「抜け落ち」があれば、その瞬間に「採点停止(当該設問の20点はゼロ点評価)」になるように思います。
シンプルに、この9つに沿って答案の「見出し」を列挙してみるとこんな感じでしょうか:
→一時払の最低額はいくら?危険選択はどうするか?
→「外貨建て」であることで、予定利率はどうするか?死亡率は保守的にするか?
→価格変動リスク
→運用に関連して整理、ERM、
→円建て商品との共通点・差異を整理して記載
→営業チャネルとの差はどこにあるか?
→ショックラプスの可能性、そのリスク管理
(→下記の運用上の課題につなげて記載するとか)
→売れなきゃしょうがないのでプロモーションの課題
→外貨運用を考える必要がある。
→区分経理どうする?責任準備金対応債券設定する?
など、生保1の設問でも生保2の観点から切り口を記載する。
☆
再び引用して答案整理してみます;
例えば、問題3(2)であれば、「低金利環境を背景に(略)海外金利を活用した」と設問の背景を問題文に記載しているので、これと同趣旨の内容を重複して1枚詳しく書いても、ほとんど加点されない。
また、アクチュアリージャーナル66 号に記載されている「第2次試験に向けた勉強を進める上での留意事項」も参考にされたい。
これはけっこう重要なことを書いてます。
「設問の背景を書いても加点されない」ということなので、「その前提で、所見展開せよ」というのが問題の趣旨なわけです。
なので「背景」などはすっとばしていかにプライシングするか、という本題(上記の切り口)に入って答案を展開してよいということになります。
ここは時間との戦いになると思いますが、背景から連想・派生すると思われる課題や懸念について整理することは加点要素になりえると思います。
レポートの書き方にも通じますね。
「意識高い系」じゃなくてもよい
のような、記述を所見のところに記載して満足する人(合格できなかった頃の自分です)がたまにいますが、これはお勧めしません。
「日本」の「アクチュアリー」として、仕事になるのかどうかを判定する試験なので、試験の答案にわざわざ書かなくてもよいと思います。
周辺知識は実務上重要ですし、設問の問いにクリティカルに響くようなものであれば加点されるかもしれませんが、試験合格だけにフォーカスして対策を考える以上、効率が悪いと思えます。
第2次試験は、 アクチュリーとしての実務を行う上で必要な
および
を有するかどうか判定することを目的としています。
ORSAやERMにしても同様ですね。
こちらはCERA試験のテキストでしたね。
加点要素を増やすために
生保1の留意点を再掲します:
これは、設問で設定している問題の認識とその整理を答案で書いてね、という要請ですよね。
なので、最先端の知識や経験値を求めているわけではない、という解釈でよいような気がします。
ということは、結局基礎知識をベースに答案を書ければ、採点の土台には乗るわけなので、業務の経験値にとらわれることなく基本を書ければ合格点に到達できるはずです。
それをいかに早く答案に書き、得点をつみあげて合格点に到達するか?
という問いに対しての個人的答えは、
です。
知識問題でがっちり対策をしておけば、所見でも耐えうるはず、というものです。
自分自身の合格したときの問題・答案を振り返ってみても、「基本的なところはきちんと書けた!」という実感がある場合にやっと合格してます。
自己採点してみて、「あ、ここミスった」的なのが無いこと、あっても1箇所くらいにとどめること。
これがなんだかんだ合格への近道のように思います。
https://nishii-showten.com/business/2018-actuary-agent/
転職する際の退職にはポイントがあります。有給消化を試験前に持ってきて、そこで受験勉強に充てるという手もありますね。
https://nishii-showten.com/business/2018-actuary-change-1/
受験計画は必要か??
暗記が得意で2科目同時に勉強できる、実務でやってるから片方だけ勉強すればよい、などなど、いろんなパターンがあると思います。
自分が受験生だったらこうします;
2科目受験の負荷はかなり大きいので、実務や考え方などで得意なほうに絞るのは全然ありかと思います。
このあたりは人事評定にかかわる会社もあるようなので、上司と相談ですかねw
☆
長文、お読みいただきありがとうございました!
準会員でアクチュアリーキャリアを止めてしまう方がいますが、時間がかかっても正会員を目指すのがよいと思います。
本記事には、巷にはなかなか出回っていない(ような気がする)ネタをなんとか入れました。
試験勉強に疲れたときにでも確認して読んでいただければと思います。
レポート作成の基本知識など、論文作成の役に立つかもしれません。
上記の本を再掲しておきますね。
合格体験記等
過去の経験を書いてみましたので読んでみてください。
過去の記憶ですが、何かの役に立てると思います。転職にも有利になりますし、頑張りましょう。

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