危険準備金の法令を整理してみよう

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アクチュアリー試験において最も最難関かもしれない、法令関係。
責任準備金の一部である危険準備金に関する法令は、保険種類ごとに計算方法が異なり、多岐にわたります。
その法令について整理してみましたのでご覧ください。

※本文では下記のような略称を用いることがあります;
法:保険業法
施行規則or則:保険業法施行規則
平成YY年告示第NN号:大蔵省(or金融監督庁、etc,,)告示第NN号(平成YY年MM月DD日)

施行規則 第69条(生命保険会社の責任準備金)

生命保険会社は、毎決算期において、次の各号に掲げる区分に応じ、当該決算期以前に収入した保険料を基礎として、当該各号に掲げる金額を法第4条第2項第4号に掲げる書類に記載された方法に従って計算し、責任準備金として積み立てなければならない。

第1号 保険料積立金(略)
第2号 未経過保険料(略)
第2号の2 払戻積立金(略)

保険料積立金については前回の記事で法令をまとめてます;

生命保険会社の責任準備金 法令を整理してみよう
アクチュアリー試験において最難関かもしれない、法令関係。 中でも責任準備金に関する法令は、保険業法、保険業法施行規則、大蔵省告示などなど、多岐にわたります。 その相互参照や意味を整理してみましたのでご覧ください。

第3号 危険準備金

 保険契約に基づく将来の債務を確実に履行するため、将来発生が見込まれる危険に備えて計算した金額

第2項~第5項(中略)

第6項 【危険準備金】

第1項第3号の危険準備金は、次に掲げるものに区分して積み立てなければならない。

第1号

保険リスクに備える危険準備金(則第87条第1号)

第1号の2

第三分野保険の保険リスクに備える危険準備金(則第87条第1号の2)

第2号

予定利率リスクに備える危険準備金(則第87条第2号)

第3号

最低保証リスクに備える危険準備金(則第87条第2号の2)

第7項

第1項第3号の危険準備金の積立ては、金融庁長官が定める積立て及び取崩しに関する基準によるものとする。ただし、生命保険会社の業務又は財産の状況等に照らし、やむを得ない事情がある場合には、金融庁長官が定める積立てに関する基準によらない積立て又は取崩しに関する基準によらない取崩しを行うことができる。

ここでは各要素である危険VのⅠ~Ⅳについて、計算概要には踏み込まず、その考え方や取り崩しにフォーカスしようと思います。

計算も重要ですが、考え方を整理しておくと2次試験対策としてより有効に思います。

平成10年大蔵省告示第231号

第1条(定義)
第2条(保険リスクに備える危険準備金の積立基準)
第2条の2(第三分野保険の保険リスクに備える危険準備金の積立基準)
第3条(予定利率リスクに備える危険準備金の積立基準)
第3条の2(最低保証リスクに備える危険準備金の積立基準)
第4条(危険準備金Iの積立限度)
第4条の2(危険準備金IVの積立限度)
第5条(危険準備金IIの積立限度)
第5条の2(危険準備金IIIの積立限度)

(ここまで略)

第6条(危険準備金の取崩基準)

危険準備金I及び危険準備金IVは、それぞれ死差損がある場合において、当該死差損のてん補に充てるときを除くほか、取り崩してはならない。

第2項

危除準備金IIは、利差損がある場合において、当該利差損のてん補に充てるときを除くほか、取り崩してはならない。

第3項

危険準備金IIIは、最低保証に係る収支残が負の場合において、当該収支残のてん補に充てるときを除くほか、取り崩してはならない。

第4項

その他前3項それぞれに共通する取崩基準として、前事業年度末の積立残高の額が当該事業年度末の積立限度額を超える場合は、当該超える額を取り崩さなければならない。

取り崩し基準のまとめ;
・危険準備金I&IV:死差損(*)のてん補
・危除準備金II:利差損のてん補
・危険準備金III:負の収支残のてん補
・積立限度額を超える場合
(*)死差でなく「危険差」と表示する場合もあります。

危険準備金

危険準備金の考え方

危険準備金とは、通常の予測を超えるリスクに対応して積み立てるもの、という性格を持っています。
では通常の予測とは何でしょうか?
人間は今のところ寿命が有限であり、個人差はあるものの天寿を全うしたり、不慮の事故で亡くなって人生に幕を閉じるわけです。
このあたりまでが「通常の予測」と考えられ、それは「保険料積立金」で賄うというのが責任準備金の思想のようです。

それを超える場合、たとえば、
・震災による一時的な死亡の増加、
・パンデミック等の流行による罹患の増加、
・不景気による相場の悪化、
などが考えられ、それらに対応して危険準備金を事前に積み立てておき、有事の際に取り崩す、というスタンス。

ちなみに危険準備金はある程度柔軟な取り崩しが可能です。
保険業法第115条に定める価格変動準備金は金融庁の「認可」を経て任意の取り崩しが可能ですが、危険準備金は「届出」。
実務上の取り扱いなので試験には穴埋め程度の出題と思いますが、同じ自己資本的な負債でも取り扱いに温度差がある点は知っておいてよいと思います。

なぜ区分して積み立てるのか

上記の通り、「通常の予測」を超えるリスクが多様になので危険準備金を区分しているようです。
当初は危険準備金Ⅰ(保険リスク)、Ⅱ(予定利率リスク)の2つしかなかったそうです。
変額保険・変額年金等の特別勘定系商品や医療保障系のリスク計算はⅠ(保険リスク)に包含されていたらしいです。

時がたち、変額商品の窓販解禁で特別勘定や最低保証にかかるリスクがクローズアップされるとⅢ(最低保証リスク)が新設されたようです。
その後、医療保障商品の台頭(分野調整の撤廃)によって死亡リスクのⅠからⅣ(第三分野保険にかかる保険リスク)が独立し、現在の4区分体制に落ち着いています。

このあたりの「リスクを如何に区分するか?」といった観点はなかなか悩ましいところのよう。

例ですが、終身保険とがん保険を考えた場合に、以下の2通りで販売すると、保険会社の持つリスク関係が微妙に変化すると考えられます;

1.終身保険、がん保険をそれぞれ主契約として独立に販売
2.がん保険を終身保険の特約としてセット販売

上記1.の場合にAさんが終身、Bさんががん保険に入るとします。この2人のリスクは概ね独立と考えられます。
Aさんが死亡すると、死亡保険金が支払われ、Bさんのがん保険はそのまま残ります。

一方、2.の場合ではAさんの終身保障にはがんがセット。
Aさんが死亡すると、特約は消滅します。同じAさんの死亡という事象でも、契約のセットアップによって残存するリスク評価が異なるようにも考えられます。

このあたりはとても悩ましい点で、主契約・特約で考えるのか、商品単位で考えるのか、そもそも会社全体で考えるのかによってリスク計測のアプローチが変わってくるように考えられます。

現行のルールでは主契約・特約を区別せずにそれぞれの給付内容に即したリスクをやや保守的に評価している、という見方もできそうです。

旧保険業法における危険準備金

平成8年以前の旧保険業法では危険準備金は以下のような設定だったようです:
・個人保険/団体保険は死差益の5%以上を毎年危険準備金として積み立てる
・積立限度は以下の通り;
個人保険:危険保険金の1/1000
団体保険:危険保険金の2/1000
・死差損を生じたときは大蔵大臣の承認を得て取り崩すことができる

積立基準の「死差益の5%」という基準が現行のものと異なっていますね。
積立限度については係数の差異がありますが、危険保険金を用いているあたり、整合的です。

基準の是非はさておき(当時から議論はあったようです)、死差益からの積立のみを要請していた点が興味深いところ。
時代背景を考えてみると、昭和の後期、人口増加と金利上昇でイケイケドンドンのような風潮だったのかもしれません。定期預金の金利が今では考えられない水準であったり、規模が拡大傾向だったのでしょう、保険リスク以外には特段の心配がなかった、ということが読み取れそうです。
昨今(2019年執筆時点)の低金利時代ではなかなか考えられない時代、当時は死亡保障をがちっと販売していたのでしょう。

「やむを得ない」取り崩し

法令では「生命保険会社の業務又は財産の状況等に照らし、やむを得ない事情がある場合には、金融庁長官が定める積立てに関する基準によらない積立て又は取崩しに関する基準によらない取崩しを行うことができる」(則 第69条第7項)というただし書きがあります。

プレスリリースなどからこの例を見つけてみました。

日本生命のリリースより

P11「キャピタル損への対応として、危険準備金を取り崩しており、」

https://www.nissay.co.jp/kaisha/annai/gyoseki/pdf/kesan21.pdf

「キャピタル損」を理由に取り崩しをしていますね。

危険準備金の取り崩し基準を復習すると、
・死差損による保険リスクへの対応、
・利差損による予定利率リスクへの対応、
・収支残赤字による最低保証リスクへの対応、
・上限到達したときの超過分の取り崩し、
・やむを得ない理由、

利差損とキャピタル損は別物ですので、
最後の「やむを得ない理由」としての選択のようです。

内部留保(自己資本)としての立ち位置

本来、キャピタル損に対する準備金として、価格変動準備金が対応するはずです。
実際のところはわかりませんが、実務上、「やむを得ない」理由として会社がピンチの場合には取り崩して経営を持ち直してOK,というように感じます。

このあたりは危険準備金のもつ「自己資本性」とも関連します。

自己資本の機能といえば、
・経営上のリスク顕在化への対応(緩衝)
・支払能力に対する信頼性確保
・経営に必要な固定資産等の取得資金
・無コスト資金としての収益性向上
でしたね。
まさに最初の1項目が危険準備金の取り崩しに該当しそうです。

危険準備金の考え方を中心にここまで記載しました。
次は、危険準備金の細かい計算について見てみようと思います。

危険準備金の計算方法を整理してみよう
アクチュアリー試験において最も最難関かもしれない、法令関係。 責任準備金の一部である危険準備金は、保険種類ごとに計算方法が異なり、多岐にわたります。 その法令から読み解く計算方法について整理してみましたのでご覧ください。

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